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解決事例ご紹介

ここでは、私たちがこれまでに解決した事件のうち、比較的、依頼数の多い分野の事件に絞って、かつ皆さまのご参考になるような事案(シンプルな事案)を、紹介していきます。「自分の悩みがどの事件にあたるのかわからない」という方は、取り扱い分野のページを参考にしてみてください。

皆様のお悩みと似ている事件がみつかれば、ヒントにして欲しいと思います。ただ、私たちも日々痛感しておりますが、この世の中に1つとして同じ事件はなく、少しの事情の違いによって、とるべき手続や結論が大きく変わってきます。お悩みの方は、ぜひ当事務所までご相談においでください。

民事事件の解決事例

(1)家事事件の解決事例

① 離婚と婚姻費用分担請求

<ご依頼者:40代女性>

手続き 離婚及び婚姻費用分担請求調停・離婚訴訟・民事保全
ご相談内容 依頼者は、夫からの度重なるDVが理由で別居を始めた女性でした。夫ときっちり離婚したいとのご相談でした。夫から生活費はもらっておらず、お子さんが1人いました。
解 決 まず、①離婚調停と②婚姻費用分担請求調停を裁判所に申立てました。調停とは、調停委員という第三者が間に入って、当事者同士の話合いによって解決を目指す手続です。①では、離婚だけでなく、親権、養育費、財産分与、慰謝料について話し合います。②では、離婚が成立するまでの別居時の生活費として、一定のお金の支払を求めます。調停で離婚の合意ができればいいのですが、合意が成立しないときは、裁判を起こして、離婚や親権者の決定、養育費、財産分与、慰謝料等を請求します。
本件では、夫が調停に2回連続で欠席しました。このケースでは夫に明確な非があり、裁判で離婚できる確信があったので、①は不成立としてもらいました。その10日後、離婚の裁判(裁判では、離婚だけでなく、親権、養育費、財産分与、慰謝料も請求しています)を起こすと同時に、夫の預金を事前に差し押さえる仮差押手続をとっておきました。すると夫が裁判には出席したので、裁判官に細目に期日を入れてもらい、約250万円の財産分与に加え、約150万円の慰謝料を払ってもらう条件で和解し、無事離婚できました。依頼者が親権者と決まり、毎月5万円の養育費を受け取ることになりました。

② 養育費・面会交流

<ご依頼者:20代男性>

手続き 財産分与・養育費請求調停
ご相談内容 離婚した元妻から、財産分与(住宅購入時の頭金の返還を求めてきました)と子の養育費を請求する調停を起こされました。依頼者様は、子と面会交流はできており、養育費を支払う意思もありました。ただ、離婚原因が元妻の浪費にあったため、妻へは養育費を少ししか支払っていませんでした。
解 決 財産分与調停では、離婚時の財産に関する資料を詳しく提出することで、分与すべき財産がないとの主張が受け入れられました。養育費請求調停では、元妻が算定表水準の現金の支払を請求してきましたが、元妻が過去に浪費した経緯を詳しく主張し、浪費を防ぐために学資保険の掛金として支払うことを提案しました(私自身、前例のない提案でしたが、調停委員も前向きに受け止めてくれました)。ただ、現金として支払う必要性も完全には否定できないので、結果的には、養育費の5割を保険掛金として払込み、残る5割はまず子の習い事の月謝に充て、なお残りがあれば子名義の通帳に振込むことに決まりました。養育費の総額としても、算定表より低水準で済みました(依頼者様と子の関係が良好で、子が例えば部活の遠征費など急な出費を訴えたときに、子と依頼者様の間でお金を授受できる環境だったため)。全体として、かなり珍しい形で終結した事件といえます。

③ 認知・遺留分減殺請求

<ご依頼者:外国人女性>

手続き 認知の交渉
ご相談内容 依頼者様はかつて他府県に住んでおり、そこで知り合った既婚者の男性の子を妊娠しました。その出産から20年近くが経過しましたが、成長した子が父に会ってみたいと強く望んだため、子との面会とともに認知して欲しいというご相談でした。
解 決 昔の情報をもとに父親である男性の現住所を調査し、何とか探し出すことができました。男性宛に秘密で連絡を取ろうと、本人しか受け取れない郵便で当方の希望を伝えようとしたのですが…男性が病気で寝たきり状態だったらしく、代わりに開封した男性の息子さんが事情を知ってしまいました。息子さんと交渉し、DNA鑑定して結果が出れば、認知手続に協力してもらう合意をしました。依頼者様は鑑定費用の準備が難しく、費用を節約するため市販のDNA鑑定キットを購入し、当職が出張して双方の検体を採取しました。鑑定の結果、父子関係が肯定され、相手方の協力のもと認知届を提出しました。その数年後、男性が亡くなり、男性の相続が生じました。御家族の意向もあったのか、男性は、全財産をお孫さんに相続させる旨の遺言を遺しておられました。そこで、再度受任して遺留分減殺請求を行い、遺産の一部を金銭で分けていただくことができました。

④ 遺産分割調停

⑤ 相続放棄

<ご依頼者:40代女性>

特 徴 申立期間を経過しても相続放棄が認められたケース
ご相談内容 他府県のとある市から依頼者様のもとへ、税金の納付書が届きました。どうやら、依頼者様が生まれる前に母と離婚したという父親が半年程前に亡くなり、その相続人である依頼者様のもとへ納付書が届いたようでした。依頼者様は、生まれてから一度も父親と会ったことはなく、行方すら知らない状況でした。
解 決 相続放棄は、相続が開始されたことを知った日から3か月以内にする必要があります。このケースでは、父親が亡くなってから3か月以上経過していますが、父親の相続が開始したことを知ってからは3か月経過していないので、その旨を適切に説明すれば、相続を放棄できます。上記の市町村を管轄する家庭裁判所宛に放棄の手続を行い、無事に放棄できました。

⑥ 限定承認

<ご依頼者:40代のご兄妹>

特 徴 失踪後死亡した父の相続につき、限定承認した事件
ご相談内容 数十年前に妻子を捨てて失踪していた依頼者様らの父親が、遠方で亡くなりました。父親には負債があったようですが、依頼者様らの姉が数年前に労災事故で亡くなり、その賠償金請求権を父親が相続していたため、相続放棄もできないという立場でした。
解 決 このケースでは、限定承認をしました。比較的珍しい手続ですが、+の財産だけではなく-の財産(つまり負債)も残して亡くなってしまい、かつ全体として+か-かがわからないときに有用です。限定承認すれば、結果的に-の方が大きくても「相続した+の財産の範囲内で」責任を負えば済むことになるからです(全体として+分が上回るならその分をもらえる、全体として-だったとしても実質的な自己負担は0で済む、というイメージです)。相続放棄と違って多少手続が難しく、相続人が複数いる場合にはその1人が家裁から相続財産管理人に選任されるなど面倒な部分もありますので、ご相談ください。

(2)民事事件の解決事例

① 交通事故

<ア:交渉で解決した事案>

ご相談内容 赤信号で停車中に後ろから追突され、3か月ほど通院しました。通院が終わった頃、相手の保険会社から賠償額を提案する書類が届きました。その額が正しいのか、相談したいということでした。
解 決 医療費や通院交通費、休業損害はすべて支払うという内容でしたが、慰謝料は裁判基準(適正価額)の40%に満たない提案でした。正式に依頼を受け、慰謝料の増額を求めて3か月ほど交渉した結果、裁判基準の90%が提示され、依頼者様が満足されたのでここで相手と和解しました。
過去には、交渉によって裁判基準100%の賠償額を獲得できた事案、最初の提案からほぼ裁判基準の賠償額を提示してきた事案、逆に交渉では裁判基準の70%までしか引き出せなかった事案(その場合、裁判等を検討します)など、様々ありました。事故態様や通院経過、交渉過程、代理人が受任したタイミング、相手方保険会社の考え方などにより、提案される賠償額が異なってきます。逆に何%で和解されるかも、お客様によって様々です。

<イ:裁判で解決した事案>

ご相談内容 派遣労働者として会社の車で送迎されている途中、運転手が信号無視して他車と衝突し、私も骨折の怪我をしました。退院後しばらくすると、まだ通院していたのに、突然、保険会社が通院を打ち切るよう伝えてきました。さらに、私に提示された賠償額は、一緒に怪我をした同僚より低いものでした。私の怪我の方が重かったのに、納得できません。また、本当なら復職までにもらえたはずの給料も支払って欲しいです。
解 決 いつまで治療が必要だったか、いつから復職が可能だったかが争点となり、交渉では折り合えなかったので裁判をしました。病院から取り寄せたカルテと、検察庁から取り寄せた刑事記録中の事故態様が、主な証拠となりました。これらにより、通院慰謝料はこちらの請求する期間分が認められましたが、復職に関しては、こちらの主張よりも早い時期に可能だったはずだと判断されました。結果として、双方の間をとるような金額での和解が成立しましたが、当初の提示額から約150万円の増額となりました。

<ウ:紛争処理センターを利用した事件>

ご相談内容 優先道路を走行中、左側の交差道路から進んできた車がぶつかってきました。相手の保険会社からは、こちらにも過失があるとか、通院期間は長くても実通院日数は少ないと言われて、賠償額を下げられています。通院回数が少ないのは仕事を休めなかったからなので、納得いきません。
解 決 まずは交渉から始めました。検察庁から実況見分調書を取り寄せ、事故態様を確認すると、依頼者様にも過失が1割認められる事案でした。この点は依頼者様にも理解いただいて、相手の保険会社とも合意しました。しかし、慰謝料に関し、相手は実通院日数を基準にした額しか出せないと譲らなかったので、交渉を打ち切り、比較的スピーディーに裁判基準の賠償額を得やすい紛争処理センターを使いました(争点が多いケースだと裁判の方がいいと思います)。こちらの主張が認められ、通院期間全体分の慰謝料が払われました。

② 不動産賃貸借

ア:貸主側の事件

<ご依頼者:60代男性>

手続き 交渉(家賃を滞納した借主に賃料支払と退去を求めた)
ご相談内容 他の事務所の紹介で、当事務所に来られました。依頼者様が所有するビルの1階を、ある個人事業者に貸していました。ところがこの借主が、10か月にわたって賃料の支払をしないので、この借主に出て行ってもらいたいとのご相談でした。
解 決 貸主が退去を通告しても、借主がごまかすばかりで、結局裁判を起こすしかなくなるケースはよくあります。ですので、いずれ裁判になることを覚悟いただいた上で、まずは交渉事件として着手し、こちらの指定日までに家賃滞納分を支払うよう求め、払われなければ賃貸借契約を解除し退去を求める旨の通知を出したのですが…予想と正反対に、借主は滞納家賃全額を支払ってきました。
こうなると、裁判で退去を求めても、裁判所は借主に退去するよう命じる判決までは出してくれません(遅れながらも賃料を全額払っているため、まだ「信頼関係が破壊された」とは言えないとして、退去を命じることまではしないケースが多いのです)。そこで、借主と交渉し、次に滞納したときは催告なしに賃貸借契約を解除できる条項を追加し、今後の滞納に備えました。「出て行かせる」という希望は残念ながら叶えられませんでしたが、未払賃料は全額回収できた上、これ以降きちんと賃料は支払われており、依頼者様にも安心してもらうことができました。

<ご依頼者:70代女性>

手続き 交渉(家賃を滞納した借主に賃料支払と退去を求めた)
ご相談内容 依頼者様は、10年近くアパートの1室をある男性に貸していました。その男性は、時々、家賃を滞納してきたが、これまでは見逃してきたそうです。ところが、ここ1年程で滞納がひどくなり、半年分の家賃が未払となってしまって困っているとのことでした。もし支払う気がないなら、出て行って欲しいという御希望でした。
解 決 まずは借主に滞納家賃の支払を内容証明郵便で催告し、こちらの指定日までに支払われなければ賃貸借契約を解除して退去してもらう旨を伝えました。合わせて、借主の父親が保証人となっていたので、こちらにも同様の書面を送りました。
すると、保証人が滞納家賃の約半額を支払ってきて、全額払うにはもう少し時間がかかること、その間だけは住まわせてやって欲しいことを伝えてきました。依頼者様はこれを承諾し、猶予期間を3ヵ月と定め、この間に滞納家賃の支払と退去を済ませるという条件を出しました(これは借主との間できちんと書面に残しました)。最終的に、賃料の支払と退去が済み、解決に至りました。

<ご依頼者:30代男性>

手続き 民事訴訟・強制執行(家賃を滞納した借主に賃料支払と退去を求めた)
ご相談内容 10年近く前に、不動産会社から投資の勧誘をされ、東京のマンションの一室を購入しました。自分が住むためではなく、それをその不動産会社に貸すことで毎月の賃料収入が入り、毎月のローンを返済しても手元に利益が残る、という計画でした。しかし、ここ半年間、不動産会社からの賃料支払が止まってしまい、連絡も取れなくなってしまいました。そもそも鍵をもらっていないので、マンション内部の確認もできないという相談でした。
解 決 その会社についてインターネットで調べると、評判の良くない、まともではなさそうな会社でした。交渉を仕掛けても雲隠れされるだけと判断し、東京地方裁判所に建物明渡を求めて提訴しました。勝訴しましたが、任意に明け渡しがされなかったので、続いて建物明渡の強制執行を申し立てました。この強制執行は、建物内に残置物が多い場合には費用が高額となるため、マンションに立ち入るときは私も不安でしたが、幸いにも残置物は多くなく、すべて無価値物だったので、速やかに明渡を受けることができ、第三者に売却してしまいたいという依頼者様の意向を叶えることができました。

イ:借主側の事件

<ご依頼者:40代女性>

手続き 交渉(不当に退去を求められたのに対し、退去料を請求した)
ご相談内容 うつ病の母とともに、とある賃貸アパートに転居しました。そのアパートには貸主も住んでいたのですが、転居して1か月後くらいのある日、貸主が、母は病院にでも通っているのかと聞いてきました。私は、母がうつ病であることを話しました。すると、貸主が、そういう人に住んで欲しくないから出て行ってくれと言ってきました。
解 決 用法遵守義務に何ら違反していないので、はっきり言えば、そのまま住み続けても何ら問題ない事案でしたが、依頼者様は「こんなアパートに住み続けたくない」というお気持ちでした。そこで、退去までの家賃支払義務を免除し、かつ転居費用に慰謝料を上乗せした解決金を支払うよう交渉しました。新たなアパートを契約してもおつりが来ましたし、スピード解決できたので、依頼者様も大変喜んでくれました。

③ 労働事件

ア:不当解雇を争った裁判

<ご依頼者:40代男性>

手続き 民事保全・民事訴訟
ご相談内容 相談者は派遣社員として働く男性でした。長年まじめに勤めてきましたが、あるとき、派遣元会社の経営者が一方的に労働条件を引き下げる提案をしてきました。これを断ったのが原因で関係性が悪くなり、無断欠勤という解雇理由をでっちあげられ、派遣元会社を解雇されました。派遣元会社に解雇を撤回させ、ずっと働いてきた派遣先会社に戻りたいという相談でした。
解 決 正式な裁判を起こす前に、仮処分(誤解を恐れずに言えば、判決が出るまでの間はさしあたり労働者の地位にあるということを仮に裁判所に認めてもらって、賃金を支払ってもらう手続です)を申し立てました。裁判所も緊急性を要する事件として、こまめに裁判期日を入れてくれました。当然、解雇事由は争点となりましたが、予想外にも、この申立の中で派遣元会社は解雇を撤回してきました。
もっとも、解雇が撤回されても元の派遣先には戻るポストがなく、支払ってもらう金額や今後の給与についても折り合いがつかなかったため、やはり正式な裁判を起こすしかありませんでした。裁判期間中に、依頼者は新たにいい職場が見つけたこともあり、裁判所が勧めた和解案(おおまかに言うと、解雇撤回時までの賃金は全額、解雇撤回から就職までの間の賃金は半額程度、会社が負担すべきだというもの)に双方が合意する形で、事件は終わりました。

イ:未払残業代を裁判で請求した事案

<ご依頼者:30代女性>

手続き 民事訴訟
ご相談内容 自動車販売会社で勤務していた依頼者は、同社で自動車を購入していました。その代金を完済する前に会社とトラブルになって退職したため、会社から、その代金を請求する訴訟を提起されてしまいました。そこでご相談を受けたところ、上述のトラブルというのが、会社が残業代をきちんと支払っていないことに起因していたとわかりました。
解 決 こちらから残業代を請求する反訴を起こしました。残業代請求としては時効にかかってしまっている部分(つまり、払うように請求することまではできない部分)も、自動車購入代金との相殺に充てることはでき、結果的には依頼者様が会社からまとまった金額の支払を受けることができました。

ウ:未払残業代の請求を交渉で減額した事案

<ご依頼者:50代男性>

手続き 証拠保全、交渉
ご相談内容 とある会社を営んでいた男性が、退職した従業員から未払残業代や慰謝料(業務中に従業員を叱った際、手を出してしまったようでした)を請求された事件です。
解 決 相手方が弁護士を通じて請求してきた(裁判所に証拠保全を申し立て、裁判官らがタイムカード等の資料の存否を調査しに来ていました)ため、依頼者様は当事務所に相談に来ました。裁判を起こされる前に解決して欲しいとのご希望でしたので、交渉事件として受任しました。
相手方弁護士に未払残業代の算出表を提示してもらい、手元の証拠と照らし合わせると、確かに、残業時や深夜労働時に生じる割増賃金が未払でした。他方、実質的に休憩時間にあたる時間分も請求されている部分があり、また慰謝料も相場より高額でした。そこで、未払残業代については、上記のような実態を踏まえ、交渉を重ねて請求額の8割以内に減額しました。また、慰謝料は、仮に刑事事件になった際に課される罰金相当額まで減額しました(請求された慰謝料の半額で済みました)。その上で、支払は1年以上の分割払としてもらいました。

エ:労災の損害賠償金を請求した事案

④ 貸金返還請求・強制執行事件

<ご依頼者:50代男性>

手続き 民事訴訟・強制執行(債権差押命令申立)
ご相談内容 依頼者様は、約3年前、仕事の取引があった知人に150万円を貸しました。しかし、約束に反して、この3年間で30万円しか返してくれず、連絡もつかないので、借金を返してもらいたい、というご相談でした。
解 決 交渉しても埒があかないと思われたので、はじめから裁判をやる方針でお引受けしました。同時に、何か差し押えられるものがあるかを調べ、もしあれば事前に仮差押手続をすることにしました。相手方の住所地を探ると、相手方の所有する不動産が見つかりました。しかし、既に担保に入れられており、仮差押しても意味はなさそうでした。他方で、そのような一定の財産があるため、一定程度は回収できる感触も得られました。
結果、相手方が裁判に出席し、借金の事実をすべて認めましたが、一括での返済は難しいとのことだったので、頭金として50万円、その後は毎月3万円ずつ分割で返済する内容で和解し、1年程は約束通り支払ってきました。しかし、また支払を怠るようになったので、相手の仕事上の報酬債権を差し押さえたところ、この強制執行に成功し、そこから残りの未払分を回収することができました。

⑤ 建築紛争

ア:新築した住宅に欠陥があり、訴訟をした事件
イ:防水工事に不備があったとして提訴され、その主張を退けた事件

(3)債務整理の事例

① 任意整理

<ご依頼者:30代女性>

負債額 約250万円(4社)/費用:分割払(積立)
ご相談内容 個人事業として経営していたお店が不景気だった頃、運転資金や生活費として400万円を借りたそうです。今は一定の利益が出ていて新たな借入れもないが、過去に返済を滞らせていたために1社から裁判を提起され、ご相談に来られました。
解 決 借金の総額が比較的高いため、破産や民事再生も頭をよぎりました(逆に言えば、任意整理で解決するのは難しいと思いました)。しかし、今はお店の経営が改善されて少しずつ利益が増えており、ある程度は返済できそうとのことでした。破産したくないという依頼者様の強い希望もあり、裁判所を介さずに個々の債権者と交渉して支払額を決める、任意整理を始めることにしました。
すぐに各債権者に受任通知を発送して請求を止め、取引明細の開示を受けました。提起された裁判にも対応し、和解で解決する段取りを裁判所や相手方と決めました。その間に、およその返済プランを立てて(現在の収入がどれくらいか、そのうち生活に必要なお金がどれくらいかを、給与明細や預金通帳、その他請求書等を確認して検討します)、無理なく確実に返済できる金額を算出し、債権者と交渉しました。
最終的に、各社とも将来利息をカットして60回前後の分割払に応じてくれました。今後は利息が発生しないため、少しずつでも確実に完済に近づいていけます。任意整理により将来利息をカットするだけでも、長い目で見れば大きな効果があるのです。分割回数をどれだけ増やしてもらえるかは相手次第ですが、今回のように融通してくれるところもあります。

② 個人再生

ご相談内容 住宅ローンが約3000万円、その他の借入や負債が約600万円あり、返済が苦しくなってきたので整理したいというご相談でした。ただ、勤務先から安定した給料がもらえており、返済が苦しくなったのは奥様が病気で働けなくなったからでした。
解 決 住宅は可能な限り残したいという希望であったこと、給料が安定していたこと、住宅ローン以外の負債への返済額が減れば生計が成り立つ試算であったことから、破産ではなく個人再生を選択することにしました。このケースでは、相談者様に一定の資産があり(自動車や保険の解約返戻金、父から相続したという不動産)、住宅ローンを除く負債額を、それら資産の総価額と同額までは圧縮できるという枠組みになりました。特に不動産の固定資産評価額が比較的高めだったのですが、不動産業者に査定してもらうと、実際には売れる見込みのない低価値のものでした。そこで不動産の評価は査定額を採用するよう裁判所に主張し、結果的にこれが認められ、最終的に住宅ローンを除く負債は約200万円にまで圧縮できました。さらに、原則はこれを3年で返済することになるのですが、奥様が病気であることその他の諸事情を丁寧に説明し、5年での返済を認めてもらいました。

③ 自己破産

<ご依頼者:40代男性>

負債額 約300万円(6社)/費用:法テラスを利用
ご相談内容 とある市議会議員さんの紹介で受任しました。依頼者はこれまで真面目に働いてきましたが、職場でのストレスや身内の不幸などが重なって心を病み、仕事を辞めました。しかし、車のローンや生活費、身内の葬儀費用のために300万円以上の借入がありました。傷病手当がしばらく給付されるとはいえ、借金を返していては生活が成り立たない状況でした。
解 決 確実な収入のない案件のため、破産手続を選択しました。依頼者様からの事情聴取や、財産関係の資料の取得・調査を重ね、3~4ヵ月程度かけて必要な書類をすべて整え、裁判所に破産申立をしました。依頼者様には一定の預貯金があり、裁判所が破産管財人を選ぶ可能性もありました(その場合、破産管財人が様々な調査を行うため手続に時間がかかり、さらに20万円程度の管財費用が必要となり、その準備を迫られます)。が、借金を負った経緯を極力詳しく説明し、かつ現在の病状や今後の治療の必要性についても裏付け資料を揃えて提出したことで、管財人が選ばれずに済み、同時廃止というパターンで早期の破産免責が実現でき、残った預貯金を治療にあてることもできました。

④ 自己破産(個人・管財)

<ご依頼者:30代男性>

負債額 約500万円(9社)/費用:法テラスを利用
ご相談内容 両親の営む会社で働いていましたが、不景気のため、会社が倒産することになりました。倒産前の数か月間、依頼者様がお給料を辞退した時期がありました。その時期に、生活費として複数の消費者金融から150万円程度の借入をしました。そういった状況だったので、学生時代に借りていた奨学金や、クレジットカードのリボ払いの支払が出来なくなってしまいました。
解 決 相談に来られた頃には転職をされ一定の収入がありましたが、500万円の返済までは無理だったので、破産手続を選びました。ただ、数十万円の預貯金や自動車、未払給与の請求権といった資産をお持ちでしたので、破産管財人の介入が予想される事案でした。こういった事案では、申立費用だけでなく、20万円程度の管財人費用を確保する必要がありますが、管財人費用は法テラスの立替が原則不可ですので、依頼者様の預貯金から準備しました(積み立てて準備するケースも多いです)。
申立後、管財人の調査がありましたが、総額99万円の枠内で手元に資産を残すことができ(幸い、自動車もそれほどの価値がないと評価され、手放さずに済みました)、無事に免責を受けることができました。

⑤ 法人破産

負債額 会社…約2億円/代表者…約1億円
ご相談内容 長く続いた食品卸売会社でしたが、大型スーパー等との競争に耐えきれず負債が2億円にまで膨れ、来週には資金繰りがショートしてしまう、という御相談でした。代表者である社長様は、個人として、会社の負債のうち半額程度の保証人となっていました。そこで、会社の破産と、社長様個人の破産を受任しました。
解 決 法人破産では、会社の資産・負債と、代表者の資産・負債とを、明確に区別する必要があります。
会社の破産としては、営業所用に賃借していた建物の明渡や、従業員への未払給与の支払、管財人費用等に、相当の費用がかかると予想されました。そこで、速やかに現地確認と資料の確保を済ませ、売掛金の回収や残った資産の確保を行い、従業員への説明と債権者への通知をしました。その後、社長様や従業員の方々の協力のもと、負債の詳細の調査と資産の詳細の調査を進め、裁判所に破産を申し立てました。管財人の就任後は、その指示のもと、未払賃金立替払制度の申請や追加資料の提出等を行いました。会社の資産は、主に滞納税金の支払に充てられ、最終的には無事に破産手続が終了しました。
社長様の破産は、法テラスの援助制度を利用して受任しました。持ち家を手放していただく必要が出てしまいましたが、管財人の尽力や御親族の協力もあり、問題なく転居でき、再就職もできました。家が亡くなったのは寂しいけれど、会社の経営やお金の悩みに苦しむのも限界だった、本当に決断してよかったと仰っていました。

刑事事件の弁護事例

(1)在宅事件(身柄を拘束されずに済んだ刑事事件)の弁護の例

① 被害者との示談を依頼されたケース

ご相談内容 依頼者様は成人したての男性で、通勤途中にある家にあった、前から欲しいと思っていた高価なロードバイクを盗んでしまいました。御一緒された御両親は、就職や将来のことを考えると絶対に不起訴にして欲しいが、どのように謝罪したらよいか自信が持てず、弁護士に依頼することを決めたそうです。
弁護活動 在宅事件で多い相談です。被害者は当然お怒りですから、加害者が謝罪に行くとかえって感情的になりがちです。「なぜこの事件を起こしたのか」という根本的な問題を見抜けていないと、被害者は許してはくれません。弁護士は、多くの被疑者と接する中でそれを見抜く能力を身に着けているので、間に入って冷静な協議ができます。この事件でも、担当検事に連絡して必要十分な事件内容を聞き、両親や関係者からは普段の様子を、本人からは言い分を聞きました。そうして事件の原因を把握してから、被害者と少しずつ話を進めていきました。やがて被害者の中に許す気持ちが芽生え、示談に応じていただき、無事に不起訴となりました。

② 主に捜査機関への対応を行ったケース

ご相談内容 依頼者様は、警察から、ある事件の実行犯グループの一員ではないかと疑われ、任意での事情聴取に応じました。そこで、本当にありのままの事実関係を話しても、他の関係者の言い分と一部異なる部分があるとしつこく疑われ、供述を変更させようとしてきます。自分が有罪だと嘘でも認めなければならないのかと不安で、弁護士に相談しました。
弁護活動 依頼者様から事実関係を聞くと、確かに不運にも、グループの一員だと誤解されそうな立場にありましたが、依頼者様自身がとった行動は、決して犯罪にあたるものではありませんでした。今後も取調べが続くことが確実でしたので、ご依頼を受けて弁護人に就任しました。それだけでも取調べの対応はかなり改善されたのですが、残念ながら今の刑事訴訟法は、弁護人が取調べに立ち会うことを認めていません。そのため、依頼者様は取調べの中で色々な誘導を受け、少しずつ実行犯に近づけられていました。そこで、弁護人から担当警察署に抗議文を送り、あくまで依頼者様の言い分どおりに供述調書を作るよう申し入れたところ、取調べ担当官が変更となりました。その後の捜査では依頼者様が厳しい追及を受けることはなくなりました。

(2)被疑者段階の弁護の例(まだ裁判になるかが決まっていない段階の弁護)

① 受任の翌日に示談し、勾留満期を待たずに釈放されたケース

<ご依頼者:20代男性>

ご相談内容 パチンコ店で他人の財布を置き引きしたのが、後日、防犯カメラの映像から発覚し、犯人として逮捕されてしまいました。その翌日、勾留された段階で弁護人につきました。彼には家庭があり、急いで身柄を解放し、かつ起訴を免れること(=裁判や罰金刑を回避すること)が目標でした。
弁護活動 直ちに被害者に、弁償したい意思を伝えました(まずは検察官を介して伝えてもらいます)。急いで職場の上司にアポをとって話し合い、給料を前借して弁償金を準備してもらいました。その後、被害者には電話で誠意をもって謝り、弁償金も準備できたと伝えたところ、夜遅くでよければ当日中に会えるとのことだったので、その晩、指定されたコンビニの駐車場へ出向いて弁償しました。急いで対応したことで、被害者もこちらの気持ちを汲んでくれ、示談書に快くサインしてくれました。
翌日には、家族や職場の上司の陳述書等を揃え、裁判所に勾留の取消請求を行いました。すると、裁判所の決定を待たずに、検察官が速やかに釈放してくれました。それだけでなく、前科があったにもかかわらず起訴猶予となり、起訴や罰金刑を回避できました。

② 被害申告の疑わしさを主張して不起訴を獲得したケース

<ご依頼者:50代男性>

ご相談内容 依頼者は、知人Aに数十万円を貸していたところ、Aが約束通りに返してくれないので、Aと話し合う場を設けました。そこには、間を取り持ってもらうため、共通の友人B・Cも呼んでいました。そこで双方が話し合い、返済プランを組み直し、合意したはずでした。しかしAは依頼者から恐喝されたと警察に被害届を出し、依頼者は逮捕されたのでした。
弁護活動 借金の返済を求める行為も、やり方を間違うと恐喝罪になる可能性があります。特に返してくれない人物が相手だと、誰でも怒りがこみ上げ、感情的な言動になるものです。なので、この点については、依頼者の主張を鵜呑みにせずに慎重に事情聴取しました。その後、Bとも会うことができ、依頼者の主張が100%真実とは言えないまでも、依頼者の主張に分があると確信しました。否認事件(無罪を主張する事件)では、一般に黙秘権を使う(供述を拒む)ことが有効と言われますが、この事件では、むしろ積極的に供述して裏付け捜査を進めさせました(もちろん供述すべき内容は、接見時に綿密に打ち合わせしました)。また、検察官に知っておいて欲しい事柄は、その都度検察官にも伝えるようにしました。結果、検察官も不起訴にしてくれました。

③ 当番弁護士として出動し、勾留請求を回避したケース

<ご依頼者:50代男性>

ご相談内容 御依頼者は、同居する連れ子に怪我を負わせた疑いで逮捕されました。その日の夕方に当番弁護士として出動の要請があり、夜、接見に行ってきました。連れ子が怪我をしたのは事実のようでしたが、御依頼者には身に覚えがありませんでした。彼は勤務先会社で重要な役職を任されており、何としても勾留を阻止する必要がありました。
弁護活動 ものは試しにと御自宅へ伺うと、幸い、御家族が応対してくださりました。彼が連れ子を心底可愛がっていた様子を聞くことができ、無実であると確信が持てました。彼の奥様(連れ子の実母にあたります)から、普段の彼の育児への様子を聴き取り、陳述書にまとめました。また、会社の社長にも連絡をとり、彼が任されていた仕事の内容や、それが中断した場合に会社が被る損失などについて聴取し、意見書にまとめました。それらを検察庁に提出し、担当検事とも電話でお話した結果、勾留請求を思いとどまってくれました。その後、在宅事件として依頼いただき、最終的には不起訴になりました。
身柄をとられるか否かで、世間の反応、お仕事への影響、事件そのものへの弁護活動のしやすさが、全く変わってきます。早期の釈放を獲得することは、無罪をとるよりも大事なことだと思います。非常識な時間帯であったにもかかわらず協力くださった御家族や社長には本当に感謝しています。

(3)被告人段階の弁護の例(裁判になることが決まってからの弁護)

無罪を勝ち取った事件

ご相談内容 とある子どもむけの美術教室で、児童の身体にわいせつ目的で触れたとして、その教室が開かれた半年後に逮捕された事件です。逮捕されたときから、依頼者は身に覚えがないとして無罪を主張していました。
弁護活動 他の弁護士とチームを組み、警察署で依頼者との面会を重ね、詳しく事情を聞きました。取調べへの対応は特に丁寧にアドバイスし、捜査状況は細かく日記につけてもらいました。美術教室の関係者らに会って事情を聞き、事件の参考になりそうな資料をいただきました。ただ、この段階での身柄の解放は、裁判所も認めてくれませんでした。
20日間の勾留後、検察官は、被害を訴えた児童の供述を重視し、依頼者を起訴(裁判にかけること)しました。
そこで、弁護人として公判前整理手続(裁判をやる前に、検察側にある証拠を開示させたり、弁護側が提出する証拠の整理をしたりする手続)を行うよう裁判所に求め、認めてもらいました。このとき獲得した検察側の証拠の中に、弁護側にとって重要なものがあり、これが勝負を決したと思います。同時に保釈を求め、ようやく依頼者の身柄を解放できました。
その後の裁判(美術教室の関係者らや参加者、担当警察官の尋問などをやりました)を経て、無事に無罪を勝ち取ることができました。その美術教室には保護者を含む多数の参加者がいて、およそわいせつ行為などできる状況ではなかったこと、子どもに楽しんでもらうためのお遊戯のようなプログラムの中で、身体の接触があってもやむを得ない状況であったことなどを明らかにできたことが、勝訴に結びついたと思います。

(4)犯罪被害者を支援した事件

① 刑事裁判に参加して損害賠償金を獲得したケース

ご相談内容 コンビニの駐車場で、犯人から一方的に理不尽な因縁をつけられ、殴る蹴るの暴行を受けました。店員の通報を受けた警察がすぐに犯人を逮捕して、その後事件は送検されました。でも検事の話では、犯人は全然反省していないそうです。犯人にきちんと謝罪して欲しいし、怪我の治療費も欲しいです。
支援活動 被害者が刑事裁判に参加できる制度を検事から教わり、当事務所の梅田が弁護士会の犯罪被害者支援委員だったので、ご相談に来られました。確かに、犯人の言い分が依頼者様や目撃者の話と大きく食い違っており、被害者として裁判を見届けたいという気持ちがよくわかりました。そこで被害者側の弁護士として刑事裁判に出席し、犯人に質問したり求刑意見を述べたりしました。賠償金については、別に民事訴訟をやると時間がかかるので、その刑事裁判を利用して支払を命じてもらう「損害賠償命令」制度を使いました。結果、犯人には相応の刑が科され、賠償金も満額支払われました。なお、被害者の弁護士費用は、一定の要件さえ満たせば国の援助が受けられます(この事例でも援助が認められました)。

② 裁判員裁判に被害者側の弁護士として参加したケース

ご相談内容 NPO法人・犯罪被害者支援センターからのご紹介でお引き受けした殺人未遂の事件です。被害者は、犯人から包丁で腹部等を刺され、重傷を負いました。被害者は外国人でしたので、日本の裁判がどのように進むかがわからず、自分が外国人であるせいで犯人の刑が軽くならないかと心配されていました。
支援活動 殺人未遂の場合には裁判員裁判が開かれます。裁判員裁判では、審理の時間が長く、手続の数も多く、被害者にとってはかなりの負担です。その上、裁判員の方々から自分がどのように見られるかという緊張もあります。それをフォローするため、被害者側の弁護士として裁判に参加しました(これも、費用については国の援助が受けられました)。担当検事と被告人への質問内容を協議したり、立場上検事が主張しにくいことを弁護士が主張するなどの役割分担をしたり、また裁判員の理解を得るため、被害者の人となりを感じてもらえるエピソードをさりげなく紹介するなどしました。この事件では、特に検察庁との裁判における役割分担がうまくいき、かなり厳しめの判決を得ることができました。

③ 被害者の代理人として加害者と示談したケース

ご相談内容 盗撮被害にあった女性からの相談でした。加害者の弁護人から示談の申し入れがあったが、何が正しいかわからず、弁護人自身は悪い人ではないとわかっていても、話をするのは不安でたまらないということでした。
支援活動 被害内容から想定される相場と対処法をアドバイス差し上げましたが、どうしても自分で交渉するのは怖いとのことでしたので、代理人に選任していただき、示談交渉しました。費用に関しては、日弁連の被害者援助制度を使えましたので、依頼者様の負担は0円でした。検察官から詳しく事情を教えてもらい、相場以上の示談金を支払ってもらいましたが、加害者はそれでも罰金刑となったそうです。
また、精神的なケアを充実させるために、静岡県性暴力被害者支援センターSORA(そら)の職員さんに事情を説明し、お任せすることにしました。